報告者:佐藤ジョン
2024年12月1日
背景
真のお父様は、「飢餓解決に一つの解決方法はない」と言われましたが、フィッシュパウダーは漁業や養殖などと並び、お父様が大きな希望を持って投入された分野です。特にフィッシュパウダーは冷凍保存なしで輸送できるため、アフリカ大陸など暑い地域での飢餓問題対策に適しています。
フィッシュパウダーの開発は北米で主に行われましたが、真の御父母様は南米にその技術を持って行こうとされました。フィッシュパウダーの製造工場の建設に関して、真のお父様はは、レダ、ジャルジン、ウルグアイに関連する御言葉の中で、次のように語られています。
「魚粉を作る工場を、付帯施設まで合わせてウルグアイに造ったのです。そして、百八十五カ国の宣教部が国と協助し、国家の力を通して販売市場を築くのです。栄養失調にかかっている人々を助けるためのものなので、国家が後援するようになっています。私たちの教会基盤を中心として魚粉を持ち込めば、その国家と販売できる市場を築くのです。」
(真の父母経10篇 291-121, 1998/03/05)
真の御父母様は、先進国で培われた技術を南米に持っていき、そこから世界に教会の宣教部基盤を総動員して販売網を確立し、世界の飢餓問題を一気に解決しようとされたようです。
私は9月に北米に行く機会があり、北米と南米でフィッシュパウダーを担当してきた食口たちに話を聞いてきました。現在私が理解している真の御父母様が計画実地されたフィッシュパウダーの内容をこの記事でまとめます。
北米のフィッシュパウダー開発
米国で統一産業系としてフィッシュパウダー研究を行っていたのは、コジアックとシアトルだったらしいです。コジアックでは、お父様のご指示のもとISA(International Seafoods of Alaska)という、1970年代末~1980年代初期に魚の加工業会社として始まった工場が二つありました。そこでは、デイビッド・クーパーさんという方がエンジニアであり、フィッシュパウダー開発の担当だったそうです。
9月末にコジアックを訪問したとき、少しだけデイビッドさんに話を聞くことができました。
元々、あるアルゼンチンの科学者が魚の中に酵母を発見し、この酵母をあらゆる種類の有機廃棄物に混ぜると、長鎖アミノ酸が作られることを発見したそうです。この酵母によって処理されるタンパク質は、タンパク質の消化に問題のある患者に使用できたそうです。コジアックには魚の加工業が多く、魚の骨や内臓など多くの廃棄物がでます。その魚の廃棄物を使用して魚粉を作るために政府から助成金を受けたそうです。コジアックのISAでも研究が進み、人間の食用のためのフィッシュパウダーも生産できる技術まで確立できたそうです。

<上:前に座っているのがデイビッド・クーパーさん>
現時代、フィッシュパウダーは珍しいものではありません。パラグアイでも、フィッシュパウダーを購入できますが、それは人間の食用ではなく、魚の養殖の餌に主に使われています。ところが、魚の廃棄物を使った場合、食用フィッシュパウダーとして、FDA(食品医薬品局)の許可がおりないようです。現代では、フィッシュパウダーは一トンあたり千ドルほどで売れますが、人間の食用ではサプリとして売られていて、それは一トンあたり65万ドルほどで売られているそうです。デイビッドさんが見せてくれた一例ですが、中国の会社SEACUREは、サプリ用としてフィッシュパウダーを販売しており、魚の内臓などはまったく使わず、魚肉のみを使用しているそうです。
デイビッドさんに、「現にフィッシュパウダーを作っている会社が多い中で、なぜ私たちの会社は成功しなかったのですか」と聞くと、「コジアックは物流が難しい離島で、酵母に必要な砂糖が高額であり、採算が合わなかったからだ」と言われました。
実際にはより複雑な原因があっただろうと思います。ISAの工場は真のお父様が本当に愛され、アラスカ43家庭を訓練した場所であり、一時は食口たちが100名以上も働いていたそうです。しかし、ISAの工場はUCIに乗っ取られてしまい、工場は売却されてしまいました。

(上:運営時のISAの工場)

<上:ISAの第一工場があった場所。工場は解体され今は物置き場となっている>

<上:ISAの第二工場はシルバーベイという会社に買い取られていた>
南米のオキアミ業とフィッシュパウダー製造
フィッシュパウダーを生産する技術があっても、膨大な量の魚を確保しなくては世界の飢餓問題解決に貢献することはできません。真のお父様はフィッシュパウダー開発を北米で始められましたが、その技術を南米に持っていき、南極のオキアミ業と連結して世界に送りだして行く計画だったようです。
「魚粉の話をすれば、希望があります。この魚粉を作るために、お父様は七千トン級の船を四隻購入し、南極のオキアミを獲るために投入しようと思います。これが、世界的な食糧問題の解決策です。これを早くしなければなりません。」
(真の父母経10篇 289-126, 1997/12/30)
南米では、穀物もパウダーにして、フィッシュパウダーに混ぜることまで検討されていたそうです。飢餓に瀕している人々にも、地域によって異なる栄養不足があるので、様々なタイプのパウダーを調合できるようにするべきです。
私は9月末にアンカレッジ教会を訪問したのですが、オキアミ漁業の責任者だった、ケン・ウィットモアさんとその相対者の真佐子さんに会い、ウルグアイを拠点としていたトップオーシャンというオキアミ漁とフィッシュパウダーの摂理のことについて聞きました。このカップルは、1980年代に、コジアックで7年間にわたる真のお父様の訓練を経て、世界各地に海洋摂理の開拓のために送られたアラスカ43家庭の中の一つの家庭です。
お父様は、南極のオキアミ漁について次のように語られています。
「南極海に行ってオキアミを獲り、食糧問題の解決において、人類に影響を与えることができる時代に入ったので、今後、世界の三分の二の人々は、統一教会を注視するのです。統一教会のみ言と海洋摂理を中心として、食糧問題解決のための全般的な準備をしてきているので、全世界が希望をもっているというのです。今や黎明(れいめい)を過ぎて、希望の太陽が昇ってくる時になったので、誰も遮ることはできません」
(真の父母経十篇二章 339-110, 2000/12/07)
誰しもが、この御言葉を読んで、オキアミ漁にお父様がどれだけ希望を感じておられたか感じることができるでしょう。また、このようにお父様は話されました。
「私たちは今、南極海に行ってオキアミを獲っています。先進国がそれを食糧にしようとして失敗したことを、私たちが研究して連結したので、海洋産業の中で、私たちの南極オキアミ事業は、世界の最先端を走っています。世界の頂上の位置に上がっているというのです」
(真の父母経十篇二章 337-024, 2000/10/17)
ケン・ウィットモアさんによると、本当にオキアミ漁の最先端にいたようで、ボストンの新食品エキスポに釣れたオキアミを出展したところ、銀メダルを獲得したそうです。審査員は「金メダルをあげなかったたった一つの理由は、直接消費者に販売しようとしているからだ。直接販売の市場は小さい。もし、オキアミを、遥かに市場の大きい食品加工業者に販売するつもりだったなら、金メダルをあげていただろう」と言ったそうです。
実際、ウィットモアさんによると、オキアミは一度に何百トンも釣れるのですが、販売はうまくいかなったようです。エビという食品はその大きさで値段が決まり、消費者に向けては高値で売ることができなかったそうです。そして、南極に行く漁業で手一杯で、結局は販売ルートを確立できなかったようです。これが継続できなかった理由の一つだったようです。
また、お父様は船についてこう言われました。
「私たちが水産事業をする目的は、お金を稼ぐためではありません。海洋産業の開発のために努力していくと、歳月が経つにつれ、神様が保護して、今や、世界が無視できない海洋産業の発展を成し遂げました。大きな船舶を五隻造り、ただ死んでいく南極のオキアミを漁獲して、食糧問題解決の先頭に立ったのです」
(真の父母経十篇二章 344-034, 2001/03/01)
お父様のみ言葉では、「トップオーシャンとして購入した5隻の船は、建造された新しい船」というような表現をされていますが、ケン・ウィットモアさんによると、「新しい船を建造するはずだったが、責任者は古いロシア製の漁船が売りに出されていたので、その5隻を購入した。結局、その5隻の内、一隻だけが整備し終えて、実際に南極付近でオキアミ漁を行うことができた。その他の4隻の内、2隻はインド人に売られて、インドに行く途中でその内一隻は大西洋に沈んでしまい、また、残った2隻はスクラップとして売られてしまった」ということでした。
唯一機能していた漁船も、最後には投資が続かず、燃料や乗組員の給料を十分払えない時期が続き、何年も維持だけで港から出ることができず、最終的には売られてしまったそうです。総合的には二千万ドルほどの投資をしたようですが、それでは十分でなかったようです。ウィットモアさんの上司も、トップオーシャンだけではなく他のプロジェクトを運営していたこともあり、資金が十分に廻らなかったようです。
資金問題で悩んでいたある日、ノルウェーの最新の漁船がウルグアイのモンテビデオ港に着き、その船長がウィットモアさんを訪ねてきたそうです。その船長が言うには「ノルウェーで統一教会のメンバーにレバレント・ムーンのオキアミ漁のビジョンを聞いて、一億五千万ドルの投資をしてオキアミ漁船を建造し、ここまで来たんだ」と話したそうです。そして、その漁船を見学させてもらったところ、病院のようにきれいで、加工システムが密集し、整備しにくいトップオーシャンと比べて余裕あるスペースに最新の加工システムが並んでいたそうです。そして、この船は、南極の氷にぶつかっても問題ない強度をもち、港に戻らずに長く漁業ができるような機能を持ち、釣れたオキアミを他の船に頼んで港に輸送する方法をとっていたそうです。
現在、ノルウェーが世界で一番オキアミを漁獲しています。そのようになったのも、真のお父様の御言葉を聞いて、そのように成功したということだったようです。

<上:アンカレッジ教会にて。右側がウィットモアご夫婦>
ウィットモアさんの話から、なぜ私たちがオキアミ漁が継続できなかったかをまとめると、(1)新しい船を製造するのではなく、古い漁船を購入し改造して使い、適切に初期投資を活かせなかったこと、(2)オキアミの販売方法が確立していなかったこと、(3)漁に出続ける投資資金が継続しなかったこと、となります。
インターネットで調べたら、現在は、日本、韓国、ノルウェーが南極のオキアミ漁を主に行っているようで、漁獲量は年間に約50万トンほどのようです。その用途は、主に養殖魚の餌として使われており、人間の食品に混ぜたり、サプリとしても売られているようです。実際にオキアミ漁は年々漁獲量は増加傾向にあるようで、もし、より厳密に市場調査して製品開発を継続していたなら、適切な市場を見つけることができていたかもしれません。
フィッシュパウダーの計画概要のまとめ
真の御父母様のフィッシュパウダーに関してのご計画を御言葉や証などから組み立て、図にまとめると以下のようになります:

失敗の原因は何だったのか、と考えると、まずやるべきことの規模を理解し計画できていなかった、という面があると思います。行おうとしていた事業と目標に対して計画された投資があまりにも十分ではなく、予期しない問題に対して経済的に乗り越えるリスク管理的余力がなかったことが、継続できなかった大きな原因のように思います。
投資が続かなければ、それまで時間をかけて教育してきた人材もノウハウもすべて無くなってしまいます。良く研究し計画をつくり、十分な初期投資と回転資金を用意し、適切な設備をもった船を建造し、利益が出るまで投資を続ける体制が必要だったようですが、投資が摂理のスピードに対応できなかったのではないかと思います。
ウィットモアさんはこのような失敗経験をしたにも関わらず、ポジティブな方でした。「今までのたくさんの失敗は、我々の成長の痛みだよ」と言われていました。海洋摂理の中でフィッシュパウダーやオキアミ漁など、真のお父様の願いに添えず、数えきれない失敗がありました。しかし、飢餓問題解決などの偉大なビジョンに向かうためには、その成長過程での多くの失敗は、最初から覚悟するべきことなのだと思います。
アラスカ43家庭を訓練される時、真のお父様は、「勝利の秘訣は勝つまでやることです」と言われたそうです。
失敗した理由には複雑な理由があったのでしょう。しかし、世界に貧困と飢餓で苦しむ人がいる限り、海洋摂理の目標は変わることはありません。それを誰かがいつかは解決しなくてはいけません。これからは私たちが新しい方法を考え、事業を起こし、各事業の問題を超えていく体制を構築していかなければなりません。
(了)
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