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過去から学び成長する家庭連合

Updated: Dec 20, 2025

2025年12月19日 佐藤ジョン 「真の父母様が世界で推進してこられたプロジェクトの多くは、なぜ継続できなかったのか」。これは多くの食口(シック)が一度は抱く疑問ではないでしょうか。


最近、この切実な問いをある指導者に投げかけたところ、「原因は一体化できなかったからですよ」という答えが返ってきました。百歩譲って一理あるとしても、私にはあまりに真剣さを欠いた分析に思えました。過去の多くの失敗の原因とは、「一体化」したら解決できるような簡単なものではないと思うからです。


多くの問題は複雑であり、多くの議論と解決策が必要なはずです。もし家庭連合がその名の通り「世界平和」を目指すのであれば、あらゆる社会問題の解決を主導できる「プロ集団」にならなければなりません。同時に、組織内部の問題に対しても真摯に取り組まなければ、成長はありません。


人類の歴史は、まさに「問題解決の歴史」です。食糧難を解決するために農業技術が発展し、権威主義の弊害を解決するために民主主義思想や三権分立などの政治構造が生まれました。法律もまた、社会問題を解決するために制定されてきたものです。数千年にわたる人類の叡智は、技術・法律・社会構造・教育制度といった形で蓄積されてきました。


具体的に、組織や社会の問題はどのように解決すべきでしょうか。まずは現状を正直に認識し、問題を明確にすることから始まります。本稿では、日常的な業務プロセスから国家レベルの構造改革まで、問題解決の具体例を通じ、組織のあり方を考えたいと思います。


プロセス(手順):組織内問題へのアプローチ


私は約10年間(2004~2013年)、日米の化学・医療・航空機産業の大手企業で勤務しました。これらの産業では、社内プロセス(標準手順)が極めて重視されます。市場競争に勝つためだけでなく、消費者や投資家を守るための政府規制が厳格だからです。


航空機産業でシステムエンジニアとして働いていた際、私は戦闘機や民間機の開発に加え、「スタンダード・ワーク」と呼ばれる社内プロセスのデータベース構築に関わりました。これは、その企業が過去100年以上にわたり蓄積してきた工学ノウハウや失敗の教訓を統合したものです。航空機産業は国防に関わる産業であるため、「プロセス(規定)にない行動は原則禁止。必要であれば新プロセスとして登録してから実行する」という厳格なルールがありました。このデータベースこそが、あらゆる問題を解決してきた企業の「核心的な無形資産」であり、これに沿うことで、若手エンジニアでも世界レベルのプロジェクトに貢献できるのです。


しかし、技術やニーズが変化する中で、新たな問題は絶えません。そこで機能するのが、PDCA(Plan-Do-Check-Act)などに代表される「継続的改善」のプロセスです。問題が発生した場合、特定の個人を責めるのではなく、「なぜなぜ分析」などを通じて根本原因を究明します。そして、誰が担当しても問題が再発しないよう仕組み(プロセス)自体を造り、全社員で知識を共有するのです。


世界で競争する企業は、このように日々、問題解決と改善を繰り返し、自己変革し続けています。


内部自浄作用:オンブズマン制度


私が米国企業で体験した組織自浄に有効なシステムの一つに、「オンブズマン(内部通報窓口)」があります。


ある時、米国本社の法務部門から連絡があり、私が機密書類を日本の関連会社へ不適切に電子メールにより送信した疑いがあるとの指摘を受けました。実際には、CCに含まれていた同僚の誰かが、私が正規の情報輸出管理プロセスを経ずにデータを送ったことに気づき、通報したようでした。幸い、法務部門の指示に従い、送信先へデータの削除依頼と宣誓書の提出を求め、正規の手続きを経て再送することで、問題は速やかに解決しました。


人間はロボットではありません。どんなに注意してもヒューマンエラーは起こり得ますし、感情や事情によって判断が揺らぐこともあります。だからこそ、信頼を前提としつつも、正しい行動を促すシステムが必要です。オンブズマン制度は、独立した中立的な第三者として機能し、組織内の問題を客観的に監視・解決するために不可欠です。(※企業におけるオンブズマン設置は、主にガバナンス上の判断によりますが、特定の業種では内部通報窓口の設置が義務化されている場合もあります。)


多くの人が関与し世界各地に広がる大きな組織においては特に、こうした内部告発システムの存在は健全性を保つために極めて有効だと思われます。


法的枠組み:エンロン事件とSOX法


法律もまた、問題解決の知恵の結晶です。その好例が「エンロン事件」とそれに続く「SOX法(サーベンス・オクスリー法)」の制定です。


2000年代初頭、米国エネルギー大手エンロン社の経営陣が、巨額の粉飾決算と株価操作を行うという事件が起きました。経営陣は捜査直前に自社株を高値で売り抜ける一方、多くの社員や投資家は資産や職を失いました。


このような被害の再発を防ぐため、2002年にSOX法が制定されました。外部監査人の独立性強化、財務報告の虚偽記載への厳罰化など、米国企業全体にコンプライアンス体制の整備を義務付けたのです。


SOX法制定と同時期にアメリカ中の企業で「利益相反 Conflict of Interest」の倫理教育が普遍化されるようになり、私も若いエンジニアとして幾度か訓練を受けることになったのです。「利益相反」とは、個人的利益のために純粋で正当な公的判断ができなくなる状況を意味するものです。 例えば、ある会社が他社の部品を購入する場合、通常は購買担当者を立て品質・納期・値段などを分析して厳密に部品のサプライヤー(売り手)の選択プロセスを行います。選択対象の部品のサプライヤーたちは購買担当者に良い印象を与えたいのですが、購買担当者に個人的にギフトを送ったりして公平な購買選択プロセスを影響しようとするのは「利益相反」という倫理問題となるのです。


なので、私が勤めていた米国企業ではこのようなことが起こらないように、社員がサプライヤーとして他社の購買担当者と一緒に外食をするとき、相手の食事が30ドル以上の時は支払ってはいけない、などの細かい社内規制があったのです。


エンロンという「失敗」を契機に、米国企業は倫理意識を底上げし、将来の世代へより健全な企業環境を残すことになりました。法律や制度は固定されたものではなく、問題を解決するために常に進化しているのです。

構造的な問題解決:アメリカ合衆国憲法


近年では「政府には問題解決能力がない」と嘆く声が多くありますが、人類は時に「革命」や「建国」という抜本的な手段で構造問題を解決してきました。アメリカ合衆国の建国はその最たる例です。


1776年の独立宣言後、当初の米国は「連合規約(Articles of Confederation)」の下で運営されていました。しかし、中央政府の権限が弱すぎたため、州ごとの関税争いや通貨の乱立など多くの問題が発生しました。このままでは国家が立ち行かないという危機感から、1787年にフィラデルフィアで憲法制定会議が開かれ、現在の合衆国憲法と三権分立の体制が築かれました。


米国憲法は、歴史上の三つの大きな問題を解決するために設計されたと言えます。


  1. 独裁・権威主義の防止: 特定の個人や集団への権力集中を防ぐため、立法・行政・司法による「抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)」を導入しました。

  2. 中央と地方のバランス: 連邦政府の統率力と、各州の自治権のバランスを定義しました。

  3. 衆愚政治の回避: 一時的な民衆感情による政治の暴走を防ぐため、議会の任期に工夫を凝らしました。民衆の声に敏感な「下院」は任期を2年とする一方、長期的視点が必要な「上院」は任期を6年と定めたのです。


米国憲法はわずか4,500語程度ですが、そこには人類の歴史的教訓と叡智が凝縮されています。このような構造改革には、失敗をお互いに認めあう謙虚さと、議論を尽くす忍耐力が必要です。南米の独立運動が統一国家に至らなかったのに対し、米国が合衆国として成立したのは、建国の父たちの高い知性と徳性があったからでしょう。



家庭連合の未来に向けて


人類はこのようにして問題を解決し、文明を築いてきました。では、創設から70年を経た家庭連合には、どのような「問題解決の蓄積」があるでしょうか。成長よりも衰退していると言わざるを得ない現状がないでしょうか。


真のお父様は、人類の苦しみの根本原因を「原罪」と見抜き、血統転換や復帰原理という解決策を示されました。しかし、私たちはそれだけに安住してはなりません。数多くの細かい問題は私たちが解決しなくてはいけないのです。家庭連合は真の父母様の志を受け継ぎ、世界の問題解決を主導するプロフェッショナル集団へと成長すべきです。


そのためには、組織内のあらゆるレベルで「継続的改善」が必要です。


まず、問題を正直に見つめること。特定の個人の責任にするのではなく、規制・プロセス・構造の問題として捉えること。そして、建設的な批判や議論を避けてはいけません。批判を封じれば現状判断ができなくなり、問題そのものを定義できなくなるからです。


問題が明確になれば、組織規定の整備、倫理教育の徹底、内部通報窓口の設置、継続的改善プロセスの導入、外部監査の受け入れなど、具体的な行動をとるべきです。「家庭連合は選民であり特別だから、他組織から学ぶ必要はない」と傲慢になってはいけません。


特に重要だと思うのは「組織構造」の改革です。多くの問題は構造から生まれることが多いのです。米国が建国時に徹底的な議論を行ったように、家庭連合も指導者や有識者を交え、何カ月かけてでも組織のあり方について議論し合うべきです。過去の叡智に学び、次世代に誇れる組織構造を残すことこそが、今の私たちに求められる最大の責任なのです。

 
 
 

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